2017年12月26日火曜日

『貧農史観を見直す』佐藤常雄

佐藤常雄『貧農史観を見直す』(講談社現代新書 1995)
佐藤氏は専門は農業史という。江戸時代のまっとうな研究というのは「近世史の専門家」以外の人のものばかりだとは、よく言われることである。
この本は私も非常に感銘を受けたのだが、同様の人は多いとみえ、個人のブログなどでも良く取りあげられている。
1995年には、NHKテレビで「お江戸でござる」という番組が始まった。近代人が忘れてしまった江戸時代の良さが、杉浦日向子によって語られるコーナーのある番組だったが、そこでは江戸の都市民についての話ばかりだった。そういった新しい目を、農村へも広げていったのが佐藤氏の本だと、多くの読者に受けとめられた。
年貢は土地所有権を保証するもの。農村は自治で運営され、武家は立ち入ることができず、農民がピケを張れば測量すらままならない。村の入口まで用水を引くのは武家の義務。……決して弱くはなく、前むきに生きる農民の姿が描かれていた。

江戸時代暗黒史観の元祖は明治政府だが、当時の左派勢力の歴史観も「奇妙な一致」を見せたという指摘があった。それはなぜなのかは重要なテーマである。

序文に書かれた蜂須賀家の先祖調べや、伊達藩での親権認定の話は、シリーズの監修の大石大三郎氏の執筆であり、大石著『江戸時代』(中公新書)の導入部と重複する部分がある。
この本を読んだのは1997年初め。